望郷ワルツ
汗ばんだ身体に畳のあとが残る
夏を彩る蝉の声も 今は静かなものだなんて
草の匂いがする 線路沿い細い国道
真白い無人駅から 大きな入道雲
曇り無い声と うらはらな愁いの手紙が届く
故郷の帰らないひとの便りはそれだけですが、
故郷の帰らないひとの不孝はそれだけですか?
飾る夜の雨粒 世界一なんて嘘さ
風に吹かれて夕涼み 通りすがりに目をそらして
未だ甘い甘い 雨に撃たれた 風下の軒先
降る街の 孵らない人の頼りはそれだけですが、
降る街の 孵らない人の不倖はそれだけですか?